腹腔鏡下手術のご案内
大腸がん手術治療に腹腔鏡下手術を開始しました。
- 当院では以前より胆のうの手術には腹腔鏡下手術を積極的に行っておりました。
- 今回、約2年間にわたり大学病院で腹腔鏡下手術の研修を行い、大腸がんに対し腹腔鏡下手術を導入いたします。
腹腔鏡手術とは
- 腹腔鏡手術とは「腹腔鏡」というテレビカメラでおなかの中をみながら行う手術のことです。
- 従来の「おなかを切る手術」は開腹術と呼びますが、腹腔鏡手術は開腹術と比べて非常に小さな創で済むために患者さんの術後の痛みが少ないこととそれにより回復が早いことが一番の長所です。
- 胆石などに対しての腹腔鏡下胆嚢摘出術は約20年前に始まりましたが現在では標準手術となっています。
- 大腸がんに対する腹腔鏡手術は日本でも約15年前から導入され、2005年度版大腸がん治療ガイドライン(大腸がん研究会編)ではStage0およびIの大腸がん(早期大腸がん)に対する外科的治療のひとつとして認められておりましたが、2009年度版大腸がん治療ガイドライン(大腸がん研究会編)ではさらにStage0およびIという規制がはずれ、がんの部位や進行度などの患者要因の他に、術者の経験、技量を考慮して適応を決めるべきであるというように改訂されています。
手術方法
- 実際の腹腔鏡手術は、開腹手術と同じ全身麻酔下で行います。
- まず腹腔内(腹腔:おなかの壁と臓器の間の空間)に炭酸ガスを入れて膨らませ、おへそからこの手術用に開発された細い高性能カメラ(腹腔鏡)を挿入します。
- この際、同時に手術操作に用いる器具を挿入するために、5-10ミリの小さなあなを左右に合計4-5か所に開けます。先のカメラでおなかの中の様子をモニターに映し出し、大腸切除や周囲のリンパ節の切除を行います。
- この手術は、専用の高性能カメラからの拡大した鮮明な画像を見ながら行うため、従来の開腹手術では見えにくかった部位や細かい血管・神経まで見えて繊細な手術操作が可能です。
- 腹腔内で操作を終えたあとに最後に病変を4-5cmの切開創からおなかの外に取りだします。
メリット 創が小さい
従来の手術で20cmほどおなかを切開した場合(開腹)と比較して、創が小さくてすむことや、術後の痛みが少ないこと、術後の腸管運動の回復が早いために早くから食事がとれること、入院期間が短くて早く社会復帰ができることなどが利点です。
腹腔鏡下手術にはマイナス点も
ただし、腹腔鏡によって視野が拡大されているということは、裏を返せば、狭い視野で手術を進めるということです。周囲の臓器との全体の位置関係は、開腹手術よりも把握しにくいと言えます。さらに、専用の手術器具を使って間接的に針や糸を操る高い技術が必要です。このため、開腹手術よりも手術時間が長くなりがちで、予期せぬ出血が起こった場合には、開腹手術に変更する必要が生じることもあります。体への負担が逆に増す危険性もあるわけです。
ご相談ください
- 腹腔鏡下手術は発展途上であり,今後は手術器具の改良や手技の向上によってさらに広まってくることが予想されます。
- 大腸の手術をお受けになる場合には,医師の説明を十分お聞きいただき,分からないこと,知りたいことがありましたら遠慮なさることなくご質問いただければと思います。